[日誌]卒業おめでとう
本日,多くの教え子が巣立っていった。厳しい経済情勢など,とりまく環境は大変な状況ではあるが,それはいつの時代でも生涯に何度かは必ずあり得ること。自分自身で納得できる人生を,送ってほしい。
毎度のことであるが,卒業していく学生たちにはエールを送りたい。授けきれなかった知識も知恵も経験もたくさんあるけれど,君たち自身は一人一人,かけがえのない人であるということは,いろんな機会を通じて伝えようと努めてきた。学生から,自分たちを否定する言葉がないのがうれしかったという言葉をもらった。よく,気づいてくれたと思う。
しかし,社会に出れば,人間関係でつらい場面もあるだろうし,給与や仕事の進め方などあらゆる面で,納得のいかない場面にも遭遇するかもしれない。傷つけられる言葉や態度もとられることもあろう。庇護される立場から競争する立場へと,置かれる場所はがらりと変わる。世の中は理不尽なことだらけなのだ。自由な社会とは,自分を受け入れてもらう代わりに,相手をも受け入れなければならない。それが衝突したとき,自分がひっこむか,規範をもって領分を平和的な手段であらそうか,しなければならない。そんなとき,普段から規範を守ったり,周囲の人に配慮した行動をとっていたりすれば,より多くの人たちが応援してくれる。情けは人のためならずなのだ。
必ずしも希望がすべてかなえられることはないとしたとき,納得できる生き方とは何だろうか。何をすれば,満足できるのであろうか。自分の主張をすべて押し通したときだろうか。あるいは,自分の思いを押し殺し,相手が満足する顔を見られたときだろうか。それとも,互いの主張をしつくした上で,おたがいに満足のいく道を見いだし,そこに踏み出したときだろうか。
本当の納得や満足は,結果の当否や多寡ではなく,自分の力を出し切ったときに生まれる。それぞれの持つよさ,強み,知恵と勇気を,周囲の人と一緒によりよい社会を作り出すことに使っていってほしい。
卒業おめでとう。そして,卒業はできなかったけれど,もう一度挑戦しようという気持ちを出してくれた君も含めて,応援している。幸多かれ。