OSXの目指すその先
昨晩,アメリカでアップル社の発表会が行われ,新OS,新サービスの概要が発表された。iPhoneやiPadなど情報端末向けiOSの進化,クラウドを基盤としたサービスの集合体iCloudの発表と,アップルの製品・サービスは順当に進化しているように見える。しかし,いささか手詰まり感があるのがOS Xだ。
iPhoneやiPadは,ついにパソコンの呪縛から離れ,クラウドサービスとつながることで独立した端末として機能し始める。後発のAndroidにあってiOSになかった仕様であり,実装の要望も多かったことだろう。iPhoneやiPod, iPadの使い勝手に感動してWindowsからMacに乗り換える(ハロー効果と呼ばれている)ユーザーも多いだけに,パソコンとの接続を前提としたiOS端末を単独で使えるようにすることは,正負両面の影響があった。だが,ネット接続にパソコンを使う人よりもはるかに多くの人が,携帯端末を使う。そんな変化が進んでいる現在,パソコンに紐付けておくことは足かせとなると判断したのだろう。
iCloudは,アップル社が従来持っていたクラウドサービスを更に進化させたものだ。クラウドサービスには高速ネット接続環境が不可欠だが,移動中も含め,少なくとも日本や韓国,アメリカの都市部やその近郊では,ネット越しのサービス利用に必要なだけの接続環境が整ってきている。パソコンにすべて貯めこむ時代から,様々な端末でネット越しにデータやサービスを利用する時代に突入する,よいタイミングをとらえている。
今回の発表でいささか拍子抜けしたのが新しいMac用のOS, OS X Lionの中身だ。価格や配布方法,一人の人にライセンスするという方式(1回買えば,個人のどのMacにも使える),バックアップの自動化など,リーダー企業ならではの方策には感心するが,クラウド化したその先,パソコン,特にファイルの活用がどうなるのか,方向性を見いだせていないように感じる。
個人や企業が活用するデータやそれを格納するファイルの量は爆発的に増えている。膨大な量のデータやファイルを扱うには,従来の階層フォルダ(Windowsの世界ではディレクトリ)による論理的な整理では対応しきれない。それは,デスクトップにファイルがちらかっている多くのユーザーの姿を見れば一目瞭然である。
個人的なアイディアとしては,Spotlightのような素早い検索がOS Xの優れた解の一つだと思う一方で,Evernoteのように,保存した画像から自動的に文字認識するような,検索のしやすさを支える機能が,OS Xには足りない。画像のみならず,動画,音声ファイルなども自動的に索引付け,タグ付けする機能が必要だと思う。
また,ファイル保存場所をクラウドにすることでどの端末,パソコンでも同じデータが使えるという利便性が向かうべき方向だと思うが,この点,今回の発表ではいまだ中途半端のように思う。iCloudやサーバー機能の低価格化(Lion Serverは,OS Xの追加機能として5,000円程度で追加できる。従来価格の1/10だ!)で一定の解が出されているとはいえ,自宅に24時間サーバーに電源を通じておく場合のリスク(出火や不正アクセス,盗難)を考えると,今回の発表概要からまだ一歩,進歩の余地があるように思う。