どんな事業者が海外ビジネスを考えるべきか(1)〜既存事業で利益は出ていますか〜
前回の投稿からずいぶん日が経ってしまったが,海外ビジネスを考えはじめたときに考えるべき最初のテーマとして,どんな条件を備えた事業者が海外ビジネスを考えるべきかを考えてみよう。
■事業の状況...海外と国内,どちらをねらう?
海外ビジネスを考えるべきかどうかを考える前に,まず国内ビジネス,あるいは既存の事業で,ある程度の利益を確保できているかを検討してみるべきだ。海外に出張したり,商談したりするだけでも費用は国内の何倍もかかる覚悟が必要である。また,そもそも既存の事業がうまくいかない,つまり経営のノウハウが確立できていないのに,よりリスクの高い海外に出ていったとしても,成功する確率が低いのは言うまでもない。
確かに,製造業をはじめとする多くの事業者が,海外展開を試み始めている。理由ははっきりしていて,親会社の要請に従ったか,円高や人口減少という日本国内でのビジネスの 難しさを危機ととらえて自主的に行動したかのいずれか,あるいはその両方だ。経済成長が続く市場での経営のほうが,成長が容易になるし,縮小する市場での競争は,熾烈になる。例えば,食品は,食べる人が少なくなれば,売 れる量も少なくなるので,国内だけに展開する食品関連メーカーは,イス取りゲームを続けているような心持ちだろう。
こうした中,企業の勝ち残り策を非常に単純化すると,海外を市場として活用するか,国内で何らかの形でナンバーワンの地位を獲得することのいずれかになる。実際,大手食品 メーカーは海外の食品関連企業を買収したりして,海外を販売市場として活用しようとしているし,先進的な中小食品関連企業は,新しいカテゴリーの食品を開 発したり,限定した地域で独自の地位を確立したりといった戦略をとっている。日々の操業や資金繰りに追われ,そうした戦略をとれない企業・事業者は,どん どん経営の選択肢が狭まっていることを実感しているはずだ。
海外ビジネスを考えるべきかどうかを考える前に,まず国内ビジネス,あるいは既存の事業で,何らかの形でナンバーワンになれないかを検討してみるべきだ。国内のビジネスでは立ちゆかないとあせって海外ビジネスに突入することは危険である。航空機のパイロットは,選択肢を狭めない決断をすることを基本としている。企業経営の場合,まずは既存事業で一定の利益確保ができていることが,選択肢を持つ,あるいは増やすということにつながる。
次回は,異文化に対する態度について考えてみよう。