学生がひきこまれやすい落とし穴,ねずみ講とネットワーク販売について
かつて受け持っていた教え子が,知人からネットワーク販売ビジネスに誘われているのだがねずみ講ではないのか,どうしたらいいかと相談してきました。以下は,その返信(固有名詞は削ってあります)。
◯◯様
元気そうで何よりです。◯◯社は,ねずみ講という悪質な犯罪ではなく,ネットワーク販売という,一応合法的ビジネスです。
ただし,参加するかしないかは,自分のやりたいことに合うかどうかでしっかり判断すべきです。基本的には参加はおすすめしません。
ねずみ講とネットワーク販売は,知人に紹介して販売していく,商売上の親子関係をとり,親が子に何かを勧誘・販売する,その際,親が手数料/会費をとるという基本的仕組みは同じです。何段もの親子関係の階層を重ね,総元締めになる人が圧倒的に儲かり,下の方へいけばいくほどものすごく多数の人をまきこまないと儲からないしくみになっているのです。
では何が違うかというと,ねずみ講は,お金を集めるだけで,商品の売買がないのに対し,ネットワーク販売は商品の売買があります。
更に,比較的良心的なネットワーク販売は,扱っている商品もまともであり,こども会員を増やすことを強制されない,買いたいものを買うだけで良いのに対し,悪質なネットワーク販売は催眠商法のようにこども会員を増やさなければいけないような気分にさせ,商品もいいかげんなものが多いです。
ねずみ講は,別名無限連鎖講といって,会員になってくれる可能性がある人が無限に多ければ,誰もが儲けられるのですが,実際には市場は限られているため,いつか飽和状態になり,上位の人だけが儲かり,下位の人はその儲けを吸い取られる構造になっているので,法律で違法行為とされています。
一方,ネットワーク販売は,適法な行為です(日本は自由主義の国なので,法律で規制されていなければ,どんな行為をしても公権力からの処罰はされない仕組みの国です)。
ただもちろん,知り合いから何かを買わされるというのは,ことわりたいと思った時に断りにくく,また実際に断った時にそれまでの友達関係を壊すことにもなりかねないので,買う場合も売る場合も慎重に考える必要があります。
将来は自分で事業を行なって行きたい,そのため,今のうちから営業活動のトレーニングをしたいというなら,◯◯社は有名で,かつまっとうな商品を供給しているので,販売にたずさわることはよいトレーニングになるでしょう。知り合いに断られることに慣れるということは,強い自分を確立する手段のひとつとなり,事業を行なっていく基礎的な力になります。ただし,そのためには一部の知人からは避けられてしまうなどという事態を受け入れることが必要になります。また,◯◯社は有名で手広く商売をやっているだけに,消費生活センターなどへの相談・苦情が多いようです。話に出てきたパーティや講習会も,基本的には◯◯社の商品を買いたい気分にさせるしくみがたくさん盛り込まれたものですので,不必要なものを買ってしまうかもしれません。
あるいは,自然商品がスキだという人,大手メーカーものは嫌いだが,◯◯社の考えに賛同できるという人は,単に自分が買いたいために会員になるということもあります。この場合,はっきりと自分の意思を伝えることができ,人に勧められても自分がいらないものは断れるという自己が確立できている人なら,心配はありませんが,頼まれると断れないというような人は,要注意です。不必要なものをたくさん買わされるハメになるかもしれません。
こうしたリスクに耐えられない,あるいは,こういうビジネスモデルはきらいだという場合,自分はそこまで強くないといったような場合,最初からこうしたネットワークビジネスには手を染めないよう,はっきりと断る必要があります。◯◯社の人たちから
みても,早めにはっきりと断られたほうが,次の人を開拓することに労力を注げるので,ありがたいはずです。