Microsoft のアプリ・サービスの使い勝手に困ったこと二件

ここのところマイクロソフト社のアプリ・サービスで使い勝手が悪くて時間を取られてしまったことが二件続いているので,自分のための覚書として記しておく。ひとつめの問題は,出先で使っていた共用パソコンでうっかり Office 365 のサービスにサインインしてしまい,サインアウトの方法がわからなくてその共用パソコンから離れられなくなったこと,そしてもうひとつは,Mac 用の One Drive for Business アプリが初回の同期が終わらずにアプリが落ちまくるというものである。

問題の背景:当事務所の情報処理環境

当事業所は事務用品・環境にアップル製品を多用しているのだが,公文書に官公庁とのやりとりも多く,止むを得ず MS Office や Windows などを使用してきた。事務所となるアップルのモバイルパソコン 11’ Mac Book Air 2015 (香港で買い求めたもの),デスクトップがわりに使っている 13’ Mac Book Air 2013 (外部ディスプレイを二つ接続し,蓋を閉じた状態で使用)の両方に,Mac OS X と Mac 用の MS Office が入っており,そこに仮想ソフト VMWare Fusion をいれて,それぞれ Windows 7 と Windows 8 ,さらに Windows 用の MS Office が入っている。

進行中のプロジェクトの業務用ファイルはオンラインストレージサービスを利用している。最近はファイルをオンラインに置いておくクラウドサービスが普及してきており,当事務所も多様な環境でファイルを参照したり編集したりすることから,これまで Dropbox, Evernote, SugarSync, iCloud など様々なサービスを利用してみたが,Office ソフトで編集できるという点が決め手となり,現在は Microsoft 社の One Drive for Business というサービスを利用している。これは,Office 365 の一部という位置付けのサービスである(契約類型によっては使えない場合もある)。Office 365は,一見オフィスソフトのサブスクリプションサービスのような体裁だが,要はクラウド・グループウェア・オフィスアプリというちょっとわかりにくいが,最新のオフィスソフトが複数台のパソコン・スマホ・タブレットなどで使えるという贅沢なサービスだ。また,One Drive にファイルが存在していると,オンラインサービスの Excel や Word で簡単に編集・印刷ができる。

発生した問題

その1 Office 365 のサインアウト問題

講義のため大学には週に一回出勤するが,そこではBYOD不採用,すなわち個人のパソコンなどは大学のネットワークには接続できず,そのかわり共用パソコンが使え,Officeも使えるようになっている。自宅で作業していた講義用資料の校正・印刷を行おうとすると,今まではUSBファイルで持ち運んだり,自分宛のメールに添付してそのファイルをダウンロードしたりする必要があったが,今回,何の気なしにブラウザでオンライン編集をしようとした。しかし,個人情報が含まれているため,こうしたファイルにはパスワードをかけてある。オンライン版 Excel や Word はパスワードがかかっているファイルは編集できず,パソコンにインストールされているアプリ版の Word や Excel で編集しろと促されたので,指示通りにした。このとき,Office 365 にサインインしてしまう。

ひととおり,編集・印刷がおわり,はて,このままログアウトすればサインアウトも自動でされるのかと,ふと不安になり,実験してみると,サインアウトされない。つまり,共用パソコンなのに個人名や個人ファイルが見えている状態になっているわけだ。Excel や Word をたちあげると,ファイルを開けるためのウインドウが開き,そこにはサインインした魚野のアカウントや直前まで編集していたファイルが見えている。ところがそのウインドウにはサインアウトするボタンもメニューもない。ウインドウを閉じるとアプリも閉じてしまうため,たちあげると,またアカウント・ファイルが見える。処置無しである。

その2 OneDrive for Business の初期設定が終わらない問題

OS X 用は β版ということでやむを得ない面はあるかもしれないが,OneDrive for Business アプリが異常に不安定である。大量のファイルを含んだフォルダー(ディレクトリ)を同期させようとすると,エラーを大量に吐き,しまいにアプリが落ちてしまう。ビジネス向けサービスとして喧伝されているわりには,堅牢性に欠ける。エラーを吐くのはやむを得ないとしても,それでアプリが落ちてしまうのはいただけない。セキュリティ上の重大なリスクともなりうる。

問題の所在とその解決方法

その1 Office 365 のサインアウト問題

わかってしまえばなんてことはないだが,Office ソフトでのサインアウトは,アプリがファイルを編集しているメインウインドウのアカウントアイコンからおこなう。先ほどのファイルをあけるためのウインドウを閉じるのではなく,隠す(右上の棒状のメニューでウインドウをたたむ)ことをすれば,メインウインドウがあらわれるので,そこで操作すれば良い。

根本的問題は,最初に表示される画面にサインアウトのメニューなどがないことだ。それを見つけるにはファイルを開けるためのウインドウを隠すという操作をしなければならないが,そういったことを思いつくためのとっかかり,ヒントがないため,おそらく一般ユーザーはほとんどたどりつけないだろう。

なぜ Microsoft はこんなヘンテコなインターフェースを考えつくのだろうか。

その2 OneDrive for Business の初期設定が終わらない問題

エラーの原因のひとつは,ファイル名の命名規則がWindows のファイル・ディレクトリ命名規則を前提にしていることだった。例えば全角のコロンが含まれているだけでエラーを発するようだ。Macやスマホなども含んだ多様な環境での使用を前提にしているにもかかわらず,である。また,一部の不可視ファイル(ドットで始まるファイルは,OS X のような Unix ベースの OS では通常は見えにくいようにしてある)でかっこが使われていたりするのもエラー原因となるようだ。これは根本原因を思いつかない。

ともかく,エラーの出ないファイル・フォルダのみ同期させ,そのあと,すこしづつ追加してみて,エラーが出たら原因を推測して試行錯誤してみる,エラーが消えれば追加続行,という地道な作業を続けるしかなさそうである。

結語

Office 365 は契約類型によってはオンライン会議システムやファイル同時編集,ひとりあたり1TBものオンラインストレージ,きめ細かなアクセス制御など,便利な機能が豊富で,最新の MS Office が複数台のパソコン・スマホ・タブレットで使え,なおかつひとりあたり月額千円強と,かなりコストパフォーマンスのよい中小企業向け,士業向けのサービスだが,まだまだ使い勝手が洗練されていない。スマホかスマートウオッチが鍵となり,席に着くと簡単に情報にアクセスでき,席を離れるとアクセスできなくなるというような仕組みが,目で見えるかたちで提供されないと,不安全・不安となる。MSのみならず,アップルやグーグル,フェイスブックが今後どのような解決方法を提案してくるか,興味深い。